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構造的な賃上げによる法人税の控除について
2024 / 01 / 31
2024年になりもう1か月になろうとしています。
本年もどうぞよろしくお願いします。
さて先月令和6年度税制改正大綱が発表されました。
今回はそのうちのひとつ「構造的な賃上げによる法人税の控除」についてお話させていただきます。
◇法人税とは◇
法人税は、法人の企業活動により得られる所得に対して課される税です。
法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となっています。
益金の額とは、商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入などでまた、損金の額とは、売上原価や販売費、災害等による損失など費用や損失に当たるものです。
(実際は、企業会計上の税引前当期純利益を基礎に法人税法の規定に基づく所要の加算又は減算(税務調整)を行い、所得金額を算出します。)
法人税額は、そうして得られた所得金額に税率をかけ、税額控除額を差し引くことで算出します。
◇構造的な賃上げの実現◇
政府は賃上げを実現し、消費を促して経済をより活発にするための法人税控除を令和6年4月1日から令和9年3月31日に開始する各事業年度が対象で行っていこうとしております。
大企業は資金力もあり賃上げしやすいですが、大企業に勤めている人の割合は1%もないといわれてます。
国全体で賃上げしていくには多くのサラリーマンが務める中堅・中小企業が積極的に賃上げをしていかなくてはなりません。
しかし、その中小企業は資金が少ないためすぐに賃上げするのは難しいです。
今回の改訂で賃上げによって法人税を控除できれば多くの企業が取り組みやすくなるでしょう。
改正後のポイントを以下大きく3つにまとめてみました。
①給与等の支給増加に対する税額控除率の引き下げと見直し
・全法人向けの措置において、原則の税額控除率を10%(現行15%)に引き下げになります。
・継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上の場合、税額控除率に追加で5%から15%までの加算です。
・教育訓練費の増加割合が10%以上でかつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合、税額控除率に追加で5%の加算です。
(※教育訓練費とは、法人が国内雇用者の職務に必要な技術や知識を習得させるために支出する費用のことです。具体的には、法人が自ら教育・訓練・研修を行う場合の費用や、他の者に委託して行う場合の費用、また他の者が行う教育訓練に参加させる場合の費用などが含まれます。
・プラチナくるみん認定またはプラチナえるぼし認定を受けている場合、税額控除率に追加で5%の加算です。
(※プラチナくるみん認定は優良な「子育てサポート」企業として厚生労働大臣(都道府県労働局長へ委任)の特例認定(プラチナくるみん認定)を受ける法人を指します)
・適用を受ける法人は、「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」を公表する必要があり、従業員が2,000人を超える場合はそれに含まれます。
②青色申告書提出法人の場合の措置
・常時使用する従業員が2,000人以下の法人で、国内雇用者に対して給与等を支給し、継続雇用者給与等支給額の増加割合が3%以上の場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除が可能です。
・増加割合が4%以上の場合、税額控除率に15%の加算です。
・教育訓練費の増加割合が10%以上かつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合、税額控除率に5%の加算です。
・プラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けた場合、税額控除率に5%の加算。ただし、控除税額は法人税の20%を上限になります。
③中小企業向けの措置の見直し
・中小企業向けに教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置を導入。
・教育訓練費の増加割合が5%以上かつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合、税額控除率に10%の加算です。
・当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けた場合、税額控除率に5%の加算です。
◇今回の改正による良い点◇
・教育訓練費が改正前は20%以上増加で5%加算でしたが、今回の改正では10%以上の増加になり教育訓練費の負担が減少し賃上げに重視できます。
中小企業の場合は改正前10%のところ、改正後は5%の増加で10%加算になっています。
・改正前の最大控除率が30%でしたが改正後最大35%の控除率(プラチナくるみん【5%控除】の新設)中小企業の場合、最大控除率40%が45%に増加。
改正前)給与4%以上増加で25%控除
教育訓練費20%増加で5%加算
→最大30%の法人税控除
改正後)給与4%以上増加で25%控除
教育訓練費10%増加で5%加算
プラチナくるみん認定で5%加算
→最大35%の法人税控除
賃金増加のみで最大控除の例を改正前と改正後であげてみると・・・・
課税所得が2000万円、人件費を1000万円からかわらずの場合、法人税230万円(法人税率23.2%)
課税所得が2000万円、人件費を1000万円から1040万円(4%)に増加。法人税が約220万円。改正前は30%の控除で154万円、改正後は143万円になります。
人件費と法人税の支出のみで考えますと
増減なしは1230万円の支出に対し、4%増加で改正前は1154万円、改正後は1143万円になります。
◇今回の改正による悪い点◇
改正前は給与3%増加で15%控除と4%以上増加で25%控除だったが、改正後は給与3%増加で10%の控除4%以上で25%の控除となっています。
これは3%給与上昇だけでは控除が以前の改正より5%も引き下げられているので控除の恩恵をあまり受けられなくなってしまいます。
企業としては賃金を最低でも4%以上の増加が求められますので資金繰りに影響がでる。
いかがでしたでしょうか。
ぜひこの制度を利用して経営者様の方は賃上げの取り組みを検討していただけたらと思います。
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